Pennyと地球あっちこっち

日米カップルの国際転勤生活 ~ ただいまラオス

密造者の温かい寝床

異世界もしくは100年前へのタイムスリップのような体験だった。

パリの宿が狭さを逆手にとる演出だったとすれば、こっちはボロさを逆手にとる宿?と思ったのはアムステルダムのクラフトマンホテル Hotel The Craftsmen のこと。

気でも触れたのかと思うほど宿泊費が高いアムステルダムで、まあまあ安い部屋を妻が見つけたのは、ブリュッセルからの車中だった。「なんだかアヤシイんだけど、ダメホテルだったらごめんね」といわれて逆に期待していたわたしを迎えてくれた宿は、薄暗さのなかにクラフツマンシップが目いっぱい散りばめられていた。たとえば、上の写真のカウンターをアップがこれ。

歯車を分厚いアクリルで固めたもの。時計職人の世界ということか。

こちらはおそらく1920年代のバイク。今どきのものと違って工業製品というよりは、職人仕事の精華というふうに見える・・・

と、バイク乗りの血を騒がせてくれるからこのホテルちょっと好きになるかも。

んで部屋に案内されてびっくり。半地下ってのは生まれて初めて。

ご想像のごとくこのホテルは、17~18世紀ごろの住宅を改造したもので、リノベーションしすぎず昔の風情を極力残してある。半地下の暗い部屋なんて陰気で嫌だというひとには向かないが、頭上を行き交う足音がオモロかったりするひとには記憶に残る体験になるかもしれない。

ところでこの部屋は The Brewer 醸造者の部屋と呼ばれている。

サイドテーブルや足もとのスツールの材料が銅鍋みたいなものに見えるんだけど、それって醸造と関係あり?な疑問を胸にベッドの向こうの扉を開けてみると・・・

そこは幅1.5メートル、奥行き1メートルほどの空間。クロゼットとして使われているが、元々は寝床だったらしい。今でこそ巨人の多いオランダ人も昔は小柄だったわけで、こういうところに収まって寝ることができたんだね。

そしてこの寝床の下にヒミツの装置が隠されていた。ビールの醸造器。

庶民が酒税のがれのためビールを密造することは珍しくなかったらしい。どうしたことかこの家の醸造器はホテルに改装されるまで撤去されることなく生き残り、「オランダ生活博物館」のような展示品として生き続けている。

The Brewer 密造者がこの上の寝床を使っていたとすれば、醸造器の発する熱のおかげで冷え込む冬場を快適に過ごせただろう。想像するだけで楽しくなってくる。

下の写真は食堂のテーブル。

汚ったなっ、と思うかもしれないが、中央付近を見るとわかるとおり、全体がアクリルでコーティングされており、つるつるの清潔なテーブルになっている。木工職人が使いたおしたのに違いない作業台を、こんなふうにして楽しむホテル、世界に何軒あるだろう。

個人的には気に入ったけど、壁も床も窓も防音が甘いので耳栓が必要。それと冬場は暖かい格好でどうぞ。

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