プーチン演説は、肩透かしな内容だった。
世界が注目した対独戦勝記念日、「戦争状態」を宣言して勇ましく国民を鼓舞するどころか、逆に言い訳がましい話が目立った。
相変わらず「ネオナチとの対決」という与太話と、「NATOが挑発してきたから」という逆切れネタで自己正当化を繰り返すばかり。これから勝利するぞ!という勇ましさが感じられなかったのは、この戦争に勝つ自信をすでにプーチンが失っているからではないか。
20年間も最高権力の座にあったせいで、本当のことを言ってくれる者が周囲から消え、ウクライナ侵攻の勝算についても耳あたりのいい分析しか聞かされていなかったのだろう。楽勝だと思っていた侵攻が遅々として進まないどころか、今月下旬にはウクライナの大反撃にあって「ロシア軍が負ける」との噂すら流れるなか、プーチンはカンカンに怒っているのに違いない。
プーチンの苛立ちを感じさせるシーンがあった。
赤の広場に将兵1万1000人が整列。その前に進み出たショイグ国防相がプーチンに向かい「軍の準備が整いました!」と宣言する儀式。そのあとショイグとプーチンが握手するのだが、プーチンは1秒もしないうちにプイッと手を離してしまった。
通常、国家の威信を見せつけるためのこうした式典では、首脳部の一枚岩ぶりをアピールするために握手ひとつにも念が入るものだが、今回は違った。おそらくプーチンのショイグへの腹立ちは日を追うごとに激しくなっているのだろう。
どんなに怒ったって戦争がうまくいかないときはある。カッコよく振り上げた正義の鉄槌を、皇帝プーチンどうすんだろねー。
ところでプーチンとウクライナ侵攻の行く先がどうなるにせよ、今後少なくとも30年間の「ロシア人の不幸」は確定的だとわたしは思っている。
現在行われている経済制裁が30年も続くわけはなく、別の意味での不幸、もっと根強い不幸に見舞われるだろう。
その原因は、ロシアで熱心に行われている洗脳教育。
・ゼレンスキーはネオナチ(彼はユダヤ系だけど?)
・NATOが攻めてくる(NATOはソ連/ロシアから身を守るための組合だけど?)
ロシアは悪魔に囲まれており、それとの戦いはすべて聖戦であるというプーチンの嘘、そして嘘が嘘とバレぬようまた嘘で塗り固める壮大な嘘つきがロシア全土の学校教育で行われている。
幼いころに刷り込まれた価値観は、容易なことでは変わらない。いつか世の中が変わって「あれは嘘だった」と気づく人が出てきても、大多数のロシア人は素直に信じることができないだろう。
事実に目を向けることなく、そもそも何が事実なのかをさぐる情報リテラシーも乏しいひとびとが有権者として国家の方向性を左右するのだからロシアはつらい・・・
という想定のもとで「今後30年間の不幸確定ロシア人」というタイトルにしてみた。
ロシアはいまウクライナの大地を蹂躙し、命を奪っているが、同時にロシア人自身の将来をも奪いとろうとしている。
長い目で見たときのウクライナ侵攻の敗者は、間違いなくロシア。ロシア人は気の毒であり、プーチンは計り知れないほど罪深い。
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