海外引越しは客自身による梱包が原則として許されないと書いたが、実態は地域によってちがうようで、仕事のすべてがいい加減だったアメリカの業者は、事前の梱包を許容してくれた。
わたしたちは絶対に破損されたくないものを守りたかった。他方、業者は自分の作業が減ることは歓迎だったと思う。ルールはルールだが、客がやりたいっていうんなら知らん顔してりゃいいやと。
ところがバングラデシュの業者さんは、見積もりに訪れたときから禁止ブツのことをはじめとしてルールにたいへんうるさく、自前梱包なんて相談した瞬間にコロされそうな雰囲気だった。
見積もりが済んでから引越しの日まで、飾り棚に鎮座するコペンハーゲンアウトレットだのマイセンアウトレットだの夫婦の手づくり食器だのが視界に入るたび動き出しそうとする手を抑えるのにひと苦労だった。
午前9時、梱包作業開始。
プチプチや発泡スチロール系のクッションは使わず、紙だけで包んでいくのを見ると(う~ん・・・)だが、ぐっと飲み込んでしまう小心者。
何もせずにこの日を迎えたわけじゃない。
梱包の前段階として、真空圧縮パックに衣服を詰めておいた。
シリカゲルやムシューダを押し込んで守りは万全。
このほかジャンル別・部屋別にモノを分類したり、ジャンルや場所とは関係なく、不定形なもの・長いものはひとまとめにしておいた。
こうした準備には思ったより手間がかかり、ヘトヘトになっていたが、すべては効率アップのため。作業員5人とわたしたち、そこそこの3密状態であるから、作業時間が短いに越したことはない。
なお、日本の引越し業者だったら全員が当日の健康チェックを済ませており、「本日は十分な感染対策をとりながら作業させていただきます!」的な宣言ありそうなところ、ここではそんなことは起きない。
だから1分でも早く終わってほしい!
というわたしたちの願いをのせて、作業は順調に進んだ。
2日間用意してあったところ、初日の午後4時すぎには梱包が終了し、わたしは優れた事前準備のなせるわざ!と自画自賛の嵐を脳内に吹きわたらせていた。
だが、よかったのはここまで。
梱包が終わったところで、現場監督が言い出した。
ちなみにこの監督さん、河野太郎ワクチン担当相にクリソツなため、ここでは河野さんと呼ぶことにする。
河野さんはこう言った。
「マダム、これからすべての箱の重さを量りたいと思いますがよろしいでしょうか」
なんだかよくわからず(ここ数日の疲労困憊のせいでふたりとも普段以上に頭がはたらいておらず)うっかりOKしてしまったのが運の尽きだったわけだが、そのことを知るのは後になってからのこと。
重量測定が始まった。
今でも正常に動作しているのかわからん測定器にどんどん乗せていく。
測定済みの箱をただ積み上げていくのかと思ったらそうではなく、ひと山つくっては河野さんの指示で積みなおし、山がようやく出来上がったところで次の山にとりかかり、また積みなおしてという具合で、えっらい時間がかかっている。
ついに作業が終わったのは午後9時半すぎ。梱包が終わってから5時間半がたっていた。
梱包の実働6時間だったから、作業時間はおよそ2倍に膨れあがったことになる。
そんなに時間かけて何してたのかといえば・・・
125個の箱が、4つの山に分けられていた。
段ボール箱はクレートと呼ばれる木製の大箱に納められ、それからコンテナに入るのだが、クレートは段ボール山にぴったりサイズのものを手づくりする、だから4つの山を完成させたと河野さんはいう。
またすべての重さを量ったのは、カンペキな荷物リストをつくるためだったというんだが、いやちょっと待て。
そーゆーさ、リストつくったり山つくったりクレートこしらえたりする作業ってのはさ、業者の倉庫とかでやるもんじゃねーの?客の家で半日がかりでやるなんて話、一度も聞いたことねえけど?
こいうのは色々と困る。事前の説明では、初日は午後4時に終わるということだったので、それをもとに行動予定を考えていたのに、家から出かけられない、夕飯も食えないで苦労した。
なによりコロナリスク無視で客宅に居続ける神経にうわぁ。このひとたち、ちょっと目を離しているとマスク外して大声でしゃべり合ってるし。
コロナなんてどのタイミングだろうがお断りだが、いたってこのタイミングで感染すると、ダッカ出発の直前くらいにどんぴしゃ陽性反応が出るだろう。
そうなったときの混乱を想像するだけであったまいたくて頭痛がする。
第四コーナーどころか、ゴールテープが目前にせまった今、なんとか無事に完走したいと思うばかりだ。
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